2013年06月号 ChatWorkが仕事を加速する
連絡手段は進化する
チームワークはコミュニケーションが命。意思の疎通が円滑であるほど、仕事はうまくいく。
人と人とのコミュニケーションをサポートするのが「IT」だ。近年、「ICT」と呼ばれるようになったのもうなずける。「C」はもちろん「コミュニケーション」の頭文字だ。
いままで、大学の業務や教育にさまざまなITツールやサービスを使ってきた。特に教育目的では、ゼミや各種の講義の参加者が意見交換する場として、ウェブサービスの利用を積極的に進めている。
'10年度まではメーリングリストを用いていたが、'11年度はFacebookにクラスごとの「秘密グループ」を作成して使った。おかげで毎回の講義の最後に私が出したお題(法律問題)について、講義時間外に積極的な議論がなされた。
'12年度は「サイボウズLive」がメイン。日常のやり取りから判例研究の議論まで、サイボウズLive上で行ってきた。ゼミや小サイズのクラスで学生たちの班が発表する際、従来は紙媒体で配布していたいわゆる「レジュメ」が完全に不要になったのは大きな進歩だ。レジュメに相当する報告要旨はサイボウズLiveのトピックとして書き込まれ、ほかのメンバーはそこにコメントする。
そして'13年度。サイボウズLiveに加え、クラウド型ビジネスチャットツール「ChatWork(チャットワーク)」を導入した。その効用は大きい。
文字による会話やおしゃべりをデジタルで可能にするチャットシステムは、10年以上前から使ってきた。マックユーザー間では長年iChatが使われ、現在は「メッセージ」に統合されている。
しかし、Mac/iPhone/iPadのユーザー間でやり取りするにはベストな「メッセージ」も、WindowsユーザーやAndroid端末の相手とは送受信できない。
そこでSkypeやFacebookのメッセージ機能を使うことになる。ただしそれぞれ一長一短だ。Skypeは相手がオンラインになっている必要があるし、Facebookはさまざまな新着通知や広告が目に入り、仕事の環境で使うには不適切である。またTwitterのDMだと140文字が上限だ。
そこでChatWorkである。クラウドベースのチャットシステムだ。アプリではなくウェブサービスだから、ブラウザーさえあればどんな環境でもOK。マックユーザー以外の人とのやりとりにも最適だ。私のマックでは、いつもGoogle ChromeでChatWorkを開きっぱなしにしている。
ウェブサイトの情報によると、セキュリティーも万全とのことで安心だ。さらにiPhone/iPadとAndroidには専用のアプリも提供されている。着信通知がされるし、動作も軽いから、「メッセージ」と同様の使い勝手だ。
私は以前からChatWorkのアカウントを取得していた。でもコンタクト(チャットする相手)の人数が40人までに制限されていたので使えていなかった。ところが今年の3月、サービス開始から2周年を迎えたと同時に追加された「Facebook連携機能」によって、コンタクト数が無制限になったのだ。
そこで本格的に使うことにした。まずは「メッセージ」を使って数人で行っていた議論を移行した。メッセージのログ約4万字をすべてコピーし、ChatWorkにペーストして準備完了。
自分もチームも加速する
使い始めてすぐに、メンバーの発言頻度がいままでより高いことに気づく。使いやすい証拠である。それ以来、自分が関係するコミュニティーのグループチャットを次々と作った。いまではすべてでChatWorkが日常的な会話のインフラになっている。
ChatWorkに用意されているチャットの種類は3つ。マイチャット、ダイレクトチャット、そしてグループチャットである。そのすべてで「タスク」を作れる。
まず、マイチャットが素晴らしい。誰からも見られることのない、自分だけの独白チャットだ。いままで、アイディアをちょっと書き付けておく備忘録的なアプリやサービスをいくつか使ってきたが、しっくり来るものはなかった。例えば、Twitterに非公開アカウントを作成して自分宛てにつぶやいていたが、文字数制限があるのが難点だった。
マイチャットはベストである。Mac/iPhone/Padその他、ブラウザーを使うすべての端末から利用可能。時系列に書き込みが並び、日時が刻印されるから、自分の思考のタイムラインが見える。書き込みは後から簡単に編集でき、Twitterと違って文字数が多くてもいいし、内容は完全に非公開。そして基本無料である。長文をマックで入力してiPhoneに転送する用途にもマイチャットを経由している。
次はダイレクトチャット。二者間のチャットだ。誰かと「コンタクト」になるとその人とのダイレクトチャットが自動的に生成され、画面左側のリストに加わる。
これのおかげで、メールの利用が激減した。個人宛ての連絡にはメールをほとんど使わなくなったのだ。メールボックスに届くのは、日経新聞の記事の目次とか、オンラインストアの商品チラシばかり。私個人を相手にするメールは1日に2通程度になった。メールの時代は本当に終わったのである。
ChatWorkでもっとも楽しいのは3名以上で会話するグループチャットだ。非公開だから安心して「ここだけの話」を続けられる。
無料の「フリープラン」ではグループチャット数は14個まで、月額380円の「パーソナルプラン」だと無制限になる。もちろん私はパーソナルプラン。チャットの内容を横断的に検索できるのが重宝だからだ。
ゼミ、同僚、NPO、講座運営スタッフといったグループでグループチャットを利用している。会話の中で発生した仕事は、「タスク」を生成して担当者を指定できるのがいい。ワークフローに直結しているのだ。
講義中の利用は効果絶大。私が出す「お題」に全員がChatWorkで回答し、その場で画面を見ながら相互に口頭で議論できる。学生たちの見解が即時に共有され、思考が加速するのだ。講義が「双方向」ならぬ「全方向」になる。
また、グループチャットを個人でも使っている。原稿の依頼を受けたら、まずは「グループチャット」を作成するのだ。例えば、この原稿の場合は「ChatWorkが仕事を加速する」という名称のグループチャットを作成し、原稿依頼のメールや資料などをすべてそのグループチャットにペーストする。あとはアイディアを思いつく都度、そこに記載。ブレスト的に使うのだ。文章の断片などもここに書いていく。
通常、画面左側のリストは最新の発言があった順にチャットが並ぶ。チャットにピンを打つと、リストの最上部に固定されるから、常時、優先度の高いチャットに目が届く。
また画面最下部にある書き込み用の枠は、上端を上下に移動させてサイズを調整できる。長文を書くときは大きくするのがいい。
自分の仕事が加速し、チームワークの密度が増す。組織や企業単位で導入すれば絶大な効果を発揮するに違いない。
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画像キャプション
‘12年度のゼミは全面的にサイボウズLiveを使用。年度末に全員で執筆した「shioゼミ判例十選」も、各々の原稿をサイボウズLiveに置いて相互にコメントし合って文章を磨き上げた
'13年度はChatWorkを活用。成蹊大学のゼミ、「民法」や「知財」の講義、顧問をしている水泳部といったグループチャットを作成。また、論文やMacPeopleの原稿も自分一人でグループチャットとして登録してブレストや草稿の執筆に使っている
iPhone/iPadのChatWorkアプリが使いやすい。この図は本原稿をグループチャットとして登録して、文章の要素をブレストしているところ